スタッフブログ特別編(#3 豊南大橋 1/2)

2021年06月18日

スタッフブログ特別編 ブラリ橋(#3 豊南大橋 1/2)

このページは、スタッフブログ担当の当社女性社員が、「橋の魅力に触れる」をテーマに作成する「スタッフブログ特別編:ブラリ橋」です。

少し長めの内容になっていますが、普段何気なく渡っている橋をちょっとだけ専門的に眺めてみました。気軽に読んでいただければ幸いです。

今日は、徳島市の川内町にある「豊南大橋(とよみなみおおはし)」に来ています。片側3車線の国道11号と徳島ICのランプウエイを跨ぐ長さ108mの橋で、平成7年、徳島ICの設置に伴い建設されました。

設計施工は、日本道路公団高松建設局。道路公団?そうか昔はこんな名前だったのですね。西日本高速道路株式会社ができてもう四半世紀が過ぎたなんて驚きです。橋の管理は、徳島ICの供用開始により徳島市に移管されました。

国道の上を跨ぐ淡いグリーンの橋桁は、広い国道の上に大きな弧を描き、初夏の爽やかな青空にその構造美を誇っています。

橋の形式は「3径間連続非合成鋼鈑桁橋」。またまた、長い名前ですが、今日は後半部分の「非合成鋼鈑桁橋(ひごうせいこうばんげたきょう)」というのは置いておいて、連続というところに注目しましょう。

つまり、この橋は「3径間連続橋」。径間毎に一つずつ桁を架ける「単純橋」と対をなすものです。橋梁の建設は、「単純橋」から始まり、このような「連続橋」へと進化しました。

「連続橋」は、単に桁がつながっているだけなのですが、現代の橋はみんな「連続橋」。少し専門的な話になるのが気がかりですが、それでは、この橋の魅力を探ってみましょう。

今日は、「3径間連続橋」の「豊南大橋」でブラリ橋。

この橋は、当社「エフ設計コンサルタント」が「耐震補強設計」を担当しました。「耐震補強設計」と言えば何を想像しますか。橋の耐震補強となると、「さて、何だろう」という方も、建物の外側の壁に斜めに取り付けられた大きな筋交いを見たことがあるのではないでしょうか。あれは建物の耐震補強ですが、橋にも耐震補強が必要です。

橋の耐震補強は、橋脚をコンクリートで巻く工法や地震のとき橋桁を落とさないようにするものなど、いろいろ工法があります。さて、豊南大橋の耐震補強とは?
実は、徳島の橋では大変珍しい工法を採用しました。今回はその話からスタートです。

それじゃあ、まず橋台のところへ行きますか。徳島の橋ではあまり見慣れない、ちょっと変わったものがあります。

橋台と橋桁をつないでいるようにも見えるけど、あれは何ですか?

あれは、つないでいるんじゃなくて、橋台の反力を利用して橋桁の力を減衰させる工法です。制震ダンパーといいます。地震が起こると橋も揺れる。
この力はとても大きいから、地震は橋にとっても大敵です。阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)のとき、横倒しになった高速道路のニュースを見たことがあるでしょ。
豊南大橋では、地震による揺れの力をこの制震ダンパーという装置で吸収して被害を防ぎます。

なかなか先進的でかっこいい。こんなものが橋に付いているなんて初めて見ました。

橋台と橋桁をつないでいるので、一見すると橋桁を落とさないための工事のようだけど、これは違います。橋桁を落とさない工事は「落橋防止工事」といって、豊南大橋でも既に終わっています。

こんな大きい橋桁がどうやったら落ちるの、と思うけど、過去の大地震では多くの橋桁が外れて落下しました。特に阪神・淡路大震災以降はこの対策が急務となって、今はほとんどの橋で何らかの対策が取られています。

地震の揺れは複雑で、橋桁が落ちる可能性をすべて想定することや、そのときの橋の動きを正確に予測するのは難しいのです。しかし、橋は橋桁が落ちたらおしまい。だから、落橋しない構造にするため、いろいろな工夫をしています。

「桁かかり長」という、橋台などの幅を確保する工事や、橋台・橋脚、さらには橋桁にも突起を設ける工法など、段階的に各種工法を組み合わせ、複合的な対応をしています。
そのため、これらの工事を総称して「落橋防止システム」といっています。

豊南大橋の場合は、橋台に載っているコンクリートの台のようなものがそうなのかな。あ!。橋脚の上にもあるし、その上の桁にも小さい突起物が付いていますね。あれもそうですね。

そうです。落橋防止は、よく見れば分かりやすいでしょ。

分かりました。それじゃあ、ダンパーの話をお願いします。

制震ダンパーは、シリンダーの中に特殊なオイルが入っていて、その中をピストンが動く構造になっています。オイルは粘性があるからピストンが動く力に抵抗する。これを粘性減衰力といって、これでエネルギーを吸収します。

車のショックアブソーバのようなものですか?

そう、そのとおり。仕組みは同じ。

他の橋にはあまり見かけないけど、それはどうしてですか?

良い質問です。それに答えるには、まず『耐震補強は何故やるの』ということから始めましょう。

そうなんですよ。日本は地震が多い国なのだから、そもそも地震のことを考えて設計してなかったのかという疑問が湧きます。

なるほど。どうして地震が怖いかと言うと、橋のような大きくて重い構造物が揺れるからでしょ。それも横に揺れるから。何百トンもある橋桁でも、重力がかかる方向、つまり縦方向の力にはコンクリートでつくられた橋台や橋脚でしっかり支えているから強い。

でも横の力、つまり水平方向の力には弱いんです。橋に限ったことじゃないけど、地震時には水平方向の大きな力をどうするかというのが設計のポイントです。

もちろん日本は地震国だから、この水平力を加味した設計手法は昔からあって、橋の設計にも使ってきました。震度法というんだけど、今となってはそれが十分ではなかったということです。

近年になって、大きな地震の被害実績が積み上がり、これまでの設計手法では対処できないということが明白になってきました。また、地震計の発達や普及による詳細な地震データの収集などが可能になり、それに応じて、耐震設計手法も確立していったということです。今はその最新の基準に基づいて既設橋梁の耐震補強をやっています。

制震ダンパーもその耐震補強の一つの工法だということですね。でも、例が少ないということは優先的に採用される工法ではなさそうですね。何か理由があるということですか?

これまでの地震の被害をみると、橋が壊滅的な被害を受けるのは、橋脚と支承(ししょう)が壊れたときだということが分かってきました。
橋脚が壊れたら大変なことになるのは、先ほど話した阪神・淡路大震災の被害を見れば明らかでしょ。阪神高速道路三号神戸線では18径間の橋が横倒しになりました。

また、支承は橋桁を橋台・橋脚の上で支えている台のことだけど、橋脚に比べれば小さい部材なので、昔は壊れてもヒューズのような役目をするから大きな問題ではないという考えがありました。

ヒューズというのは家にも付いているでしょ。あれは過大な電流が流れたらヒューズエレメントというところが溶けて電気回路を遮断し、他の大事な機器を保護する役目を果たします。
ところが、橋の支承の場合、そんな期待は外れ、橋桁を落下させるという大きな被害につながったのです。そこで、最終的に、落橋防止システムの導入となりました。

橋脚のほうは、阪神・淡路大震災のときのように、致命的な破壊とならないよう、まずは、鉄筋コンクリートや鋼板で橋脚の周囲を巻いて補強しました。

それじゃあ、豊南も橋脚を巻けばよかったのに何故?

分かってきたなあ。その答えは、橋の周辺をよく見てもらえれば分かります。

。 ICの入り口の道路や国道が接近していて、工事が難しそうですね。

それが答えです。既設道路の通行に影響を与えない工法を選んだことにより、制震ダンパーの採用になりました。

なるほど、なるほど。橋を守るためにこんな工夫がなされているなんて、国道や高速を利用している皆さんは知らない方も多いかも・・・」

安全装置は主役じゃないから、目立たないところでしっかり働けばいいんじゃない。

深い!

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スタッフブログ特別編:ブラリ橋 #3 豊南大橋(2/2)へ続きます。

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※レトロ風に制震ダンパーの写真を撮ってみました。スタッフブログ専属カメラマン(?)KYさんによれば、カメラの正式な仕様では「ビンテージ(vintage)風」というそうです。

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