スタッフブログ特別編(#2 吉野川橋りょう(高徳線)2/2)

2021年04月09日

スタッフブログ特別編 ブラリ橋(#2 吉野川橋りょう(高徳線)2/2)

このページは、スタッフブログ担当の当社女性社員が、「橋の魅力に触れる」をテーマに作成する「スタッフブログ特別編:ブラリ橋」です。

少し長めの内容になっていますが、普段何気なく渡っている橋をちょっとだけ専門的に眺めてみました。気軽に読んでいただければ幸いです。

今日も、前回に引き続き「吉野川橋りょう」に来ています。
さて、カメラの話が長くなりました。橋の話に戻りましょう。

ここから見ればよく分かるでしょう。3径間をまとめて一つの桁が架かっているということが。こういう橋を連続橋といいます。単純橋の「那賀川橋りょう」は「10径間単純平行弦ワーレントラス」という形式だったけど、「吉野川橋りょう」は、「3径間連続平行弦ワーレントラス」となります

しかし、これだと橋全体を指してないので、厳密に言うと「3径間連続平行弦ワーレントラスが4連」と両岸にある単純橋も併せて「単純平行弦ワーレントラスが両端にひとつずつ」となる。初めて聞けばややこしいかな。嫌にならないでついてきてね

・・・・、ビミョーです(^▽^;)

とにかく、この橋の特徴は90年近くも前に、こんな大きな橋を連続橋という形式でつくったということですね

そのとおりです

それじゃあ、なぜこの時代は連続橋が珍しかったのですか

まずは、単純橋の構造計算が連続橋より簡単だったということ。また当時は、橋台や橋脚の工事の信頼性に不安があった。たとえば沈下するとか。そうなると、想定外の箇所に思わぬ力がかかり橋が危険な状態になる。そんなこともあって、昔はほとんどの橋が単純橋で建設された。
うーん、こんな説明じゃ分からないよね。この話はまた別の機会にしますか。と言うのも、現代の橋は基本的に連続橋なので

え(°д°)、まあいいか。難しそうなので

今日はワーレントラスの話をもっと深めよう

それなら、ワーレンですけど、ワーレンは人の名前ですね。ネットで調べるとウォーレントラスと書いている人もいるけど。ウィキペディアには、ワーレントラスは、ジェームス・ワーレン( James Warren)とウイロビ・モンザニ(Willoughby Theobald Monzani)が特許を取得したって書いてあります。だったら、ワーレン・モンザニトラスとすればよかったのに。
略すのが得意な日本人からすれば、ワーモントラスでもいいですね

するどい!まずウォーレンだけど、これは名前だから英語発音(wˈɔːrən)を優先したのでしょう。それよりモンザニ、恐らく省略されたのだと思う。ワーレンの橋は世界中で人気を博し、いつのまにかトラス橋の代名詞になった。その過程で、モンザニは置きざりにされたか、あるいは最初からワーレンだけかもしれない

モンザニさん、かわいそうに

そうだね。でも気にしてないかも。彼はミュージシャンだから

オットッ!

モンザニは、ロンドンの生まれのイギリス人で、「英国産業史ガイド」という資料には「ミュージシャンと特許保有者」と記されている。1844年にボートに関する特許を取得、その4年後にワーレンと共同でトラス橋の特許を取得した。だから、音楽家であり技術者でもあったということかな

それじゃあ、ワーレンが土木技術者だったわけですね

ところがワーレンは貿易商人だった。ロンドン生まれでモンザニより二つ年上。ワーレンはもっとすごい人で、鉄道や鉄道車両の改良に関するものなど、特許をいくつも持っていた。だからエンジニアだったことは確かです

昔の人は多才ですね。さすが、産業革命発祥の地イギリスというところかな

ところで、トラスという言葉はどんな意味なんだろう

語源辞典では、トラス(truss)は、1200年頃、古フランス語から派生した言葉で『束ねる』という意味らしい。強引に想像すれば、長い棒をカメラの三脚のようにして、がっしりしたものをつくるという感じかな。実は、トラス橋という言葉が記録されるのは1650年代らしいから、トラス構造は古くから橋に使われていたようです

じゃあ、そのあたりの歴史を教えてください


ここからはMSさんの話です。

先ほども言ったように、トラス構造の橋というのは、ワーレントラスが最初ではありません。そういうこともあってか、ワーレンとモンザニの特許はトラスの構造設計というより、トラス橋の建設方法に重きを置いたものでした。

それでも、ワーレン・モンザニが唯一独創的なアイデアとして主張したのが、圧縮力がかかる上弦材と引張力がかかる下弦材を、三角形として使用する構造でした。この形状は、それまでのトラス橋と比べ、とてもシンプルで経済的であったことから、世界に一気に広がりました。

ワーレンらが特許を取った三角形トラスは、吉野川では、「東三好橋」や「阿波麻植大橋」に見ることができます。

その後、橋脚と橋脚をできるだけ離して、大きな橋を架ける試みが始まります。そのための工夫が、三角形を二分するように入れられた垂直材でした。

桁を長くするために挿入された垂直材の役目は、橋の剛性を高めること。剛性というのは、その漢字からも連想されるとおり頑丈さです。変形のしづらさの度合いと定義されます。

さらにもう一つ、垂直材には大切な役目がありました。それが座屈防止です。

トラス橋の上弦材には圧縮力がかかるため、上弦材が長いと座屈する危険性があります。そこで上弦材の中央に垂直材を接合し、構造的な部材長を短くしました。

座屈は細長い材料を取り扱うときの大事なチェックポイントです。座屈という現象が工学的に解明されていなかった金属トラス橋の黎明期(れいめいき)には、座屈による橋梁事故を避けることができませんでした。

「吉野川橋りょう」は、その垂直材を挿入した形式のワーレントラスです。

桁長を長くするために、もう一つ工夫がなされました。それが桁高(構造高)を高くすることです。その結果、垂直材が入った曲弦ワーレントラスが登場します。それまでは上弦材が水平でしたが、今度は桁の中央に向かって上弦材が斜めにせり上がります。

この形式は、昭和初期から戦後にかけてトラス橋に採用された最も一般的な形式となります(※1)。徳島で代表的な曲弦ワーレントラスと言えば、昭和3年に完成した道路橋の「吉野川橋」ですが、鉄道橋にも多く採用され吉野川にも多数架けられています。

トラス橋は古くから多くの人達により試行錯誤が重ねられてきました。そんなトラス橋の発展過程からすると、ワーレントラスは独創的なアイデアとは言えないのですが、ワーレンらは特許を取得するにあたり、それまでにはなかったある画期的なことを提案します。それは、鉄道が通る軌道面をトラス構造の上にも設置できるということでした。このような形式を上路橋といいます。

今でも上路橋は至るところで見ることができます。吉野川の例では「池田大橋」がそのひとつです。

ワーレンらにより正三角形トラスが提案されるのは1848年ですが、1840年代前後には二等辺三角形トラスや「ハウトラス」・「プラットトラス」と呼ばれるワーレントラスに並ぶ代表的なトラス橋がつくられていました。これらのトラス橋がワーレントラスの着想に大きな影響を与えたと思われます。

上の写真、手前のオレンジの橋は典型的なワーレントラスです。その向こう側の橋は緑色なので鉄道橋だということは分かりますが、よく見ればワーレントラスとは形が違います。実は、これがJR土讃線で今も使われているプラットトラスです。ワーレントラスと違い、斜材が橋の中央を境にして同じ方向に入ります。それにしても、代表的トラス橋の見事なコラボです。

「伊予川橋りょう」ってどこにあるのですか

三好市山城町。国道32号を高知方面に向かえば右手に見えます。祖谷のかずら橋へ行ったことがあるなら、途中で見かけていると思うよ

よっぽどのマニアですよ。この違いに気づける人は!

トラス構造は歴史が古いから、屋根を支える構造として一般的な工法でした。以前、ブラタモリで紹介していた白川郷の合掌造りもトラス構造を利用した屋根です。屋根の下を三角形のトラス構造にして空いた空間で養蚕をやっていた。ところで、なぜ合掌造りって言うと思う?

掌(てのひら)を合わせるでしょう。えっ! 三角はどこ?

タモさんも答えに少し窮していたけど、屋根の形を表す三角は合掌した手の下にできる空間のこと

なるほど~

屋根もトラスなんですね(※2)

そうだね。実は先日、プラットトラスの屋根を見つけたので写真を撮っておきました。さて、そろそろ終わりにしようと思うけど、その前にひとつだけ質問。「吉野川橋りょう」には堤防側にだけ単純桁のトラスがあります。なぜでしょう

それはね、1径間のトラス桁が五つの三角からできているでしょう。それを3径間分つくると、三角が六つ残るんですよ。だからそれを三つずつ両側に分けた。そうすれば左右対称の綺麗な橋ができるでしょ

(^-^)//””ぱちぱち

さすがですね~え。さ~て、それでは帰りましょうか。今日はいろいろ教えていただきありがとうございました。ところで、次回はどこですか

・・・・・・

※1)昔の古いトラス構造の橋は曲弦トラスが多いように思うけど、比較的近年のトラス橋は直弦トラスの方が多いのでは?そんな疑問をお持ちの「橋マニア」の方に下記の記事を紹介しておきます。

株式会社鋼構造出版の「道路構造物ジャーナルNET インタビュー記事:これでよいのか専門技術者(一般財団法人)首都高速道路技術センター上席研究員髙木 千太郎 氏」に次のように書かれています。
『高度経済成長期以降の連続トラス橋の場合は、当該箇所の解析が進み、中間支点上の構造高を高くしても、上弦材の応力が減少しないことが明らかとなった。さらに、中間支点上の構造高を高くすると、反って部材長の大きい圧縮柱材が必要なことだけではなく、圧迫されるような外観となる。このような理由から、70m程度の支間長の連続トラス橋においては、垂直材が無く、構造高が一定な直弦ワーレントラスとする事例が増加する結果となった』

※2)「在来工法(木造軸組構法)」という工法で建てられる日本の一般的な住宅の屋根は、トラス構造ではありません。

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