「幸せを呼ぶ青い蜂」図鑑のように撮ってみた

2022年07月26日

「蜂はどんな色?」と聞かれれば、どのように答えますか。たぶん、「黄色と黒の縞模様!」。私たちが身近に接することができる蜂は、ミツバチやスズメバチですが、黄色と黒が主体の色です。

黄色と黒の縞模様、どこかで見たことがあると思いませんか。そう、踏切の遮断棒や標識です。他には、注意喚起が必要な工事現場などでも見かけます。確かに、黄色と黒が交互に描かれています。

どうして黄色と黒なんでしょう。この色、蜂にとっては、自分の身を守るための色だそうです。自分を守るなら目立たない色がいいのでは。つまり、保護色。多くの生物は擬態や保護色で外敵から身を隠しています。

ところが、蜂はその逆をやっているのです。これを警告色(警戒色とも)というそうです。

警告色を持つ生物は、敢えて目立ちやすい体の色や模様を誇示して、外敵に自分に手を出すな。出すと危険が及ぶぞと警告を発しているのです。蜂が近くに飛んできたら逃げなければと思うのは、蜂の模様もおおいに関係があるということです。

「じゃあトラはどうなの。トラの体もよく似た模様。トラは食物連鎖では食う側の生物、いわゆる捕食者。蜂のような脅しはいらないのでは?」と、考えた方。その疑問に答えていると、本題とは関係ないほうに行くので、気になる方は「虎 模様 なぜ」でネット検索してみてください。

さて、上の蜂の写真、さきほどの説明とは真逆の色です。黄色に比べて、全く目立たない青と黒の模様。この蜂の名前は、この青い色から来ていて、「ナミルリモンハナバチ(注1)」といいます。漢字では「波瑠璃紋花蜂」。
波状の瑠璃色の模様がある花蜂、つまり花から花へ飛び回り花粉や蜜を集める蜂ということ。瑠璃色は、紫みを帯びた濃い青のことで、「~瑠璃色の地球~」と随分昔の歌ですが、ある女性歌手が唄っていました。

よく見ると、青い色の細い毛が線状に生えていて、それが胴体の黒と合わさって美しい紋様を織りなしています。

日本では、「ブルービー(Blue Bee)」の愛称を持ち、存在の希少性と鮮やかな青い紋様を持つことから、「幸せを呼ぶ青い蜂」と呼ばれています(「幸せを運ぶ青い蜂」とも言われます)。

大部分の蜂が黄色なのに、ナミルリモンハナバチは、青色。青色は、一般的に収縮色、後退色、寒冷色などのイメージ効果を持っているとされます。「好きな色は何ですか?」と尋ねられれば、爽やかさや清潔さのイメージから、青色を選ぶ人が多く、人気が高い色とされます。この蜂に魅せられる人が多いのは、そのようなところも理由の一つと言えそうです。

しかし、それは人間の間での話。蜂の立場に立つと、こんなおとなしい色で大丈夫なのかと心配になります。目立たない色が原因で、攻撃されやすくならないのでしょうか。レッドデータブックによると、ナミルリモンハナバチは、青森県で絶滅危惧種Ⅰ類、群馬県・京都府で絶滅危惧種Ⅱ類、茨城県・栃木県で準絶滅危惧種に指定されています(注2)。やはり、生存が脅かされているようです。

しかし、色が原因で個体数が減少するなら、もう既に生存していないはず。この原因は他にありそうです。それは、この蜂のびっくりする生き方が関係しているようなのですが、その驚くべき生態については最後にご紹介します。

実は、この写真、残念ながら徳島県で撮ったものではありません。当ブログのスタッフが高知県までわざわざ出かけて行って撮りました。そこは、高知県北川村にある「モネの庭(※3)」。
モネとは、あのフランスの印象派画家クロード・モネのことですが、この庭は、モネ財団から「モネ」を冠することを公式に認められている世界で唯一の庭園です。
ここでは、四季折々の美しい花々を鑑賞でき、有名な青い睡蓮は、6月下旬頃から11月初旬頃までが見頃だそうです(注4)。

この日は、秋の七草のひとつである「オミナエシ(女郎花)」に、ナミルリモンハナバチが飛んできました。見かけたのは2,3匹。すぐに姿が見えなくなるのですが、またどこからかともなく現れます。気まぐれなナミルリモンハナバチにフォーカスするのは大変だったのですが、写真の一つは、次のようなカメラ仕様で撮りました。写真が好きな方のために載せておきます。

カメラモデル:Canon EOS 5D Mark III
レンズ:EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM
絞り値:f/6.3
シャッタースピード:1/320秒
露出補正:なし
焦点距離:400mm
レンズ口径:77mm
露出プログラム:プログラムAE

写真を撮っていたとき、黄色い花の上を忙しく飛び回るナミルリモンハナバチの姿を見ていると、可憐に細々と生きているという印象でしたが、そんな印象は間違っているのかなと思いたくなる驚きの生態が「労働寄生」というものです。

生物に詳しい方ならともかく、私のような門外漢には、聞き慣れない言葉です。ウィキペディアから、この言葉の説明を引用してみます。

「労働寄生(英語: kleptoparasitism, cleptoparasitism)は、生物における寄生のあり方の一つを指す言葉である。宿主の体から直接栄養を得るのではなく、宿主が餌として確保したものを餌として得るなど、宿主の労働を搾取する形の行動を取ることを指す。盗み寄生とも言う」

「盗み」という言葉が出てくるので、少し物騒な気がしますが、自分では巣を作らず、近縁の種の巣の一部を奪い、餌も横取りするそうです。
但し、詳しい生態は分かっていないようで、ナミルリモンハナバチ・ファンなどが書かれたネットの記述では、労働寄生の対象となる花蜂は、スジボソフトハナバチとするものやコシブトハナバチ類やケブカハナバチ類という記述も見られますので、この点については、まだまだ情報不足のようです。

詳しい生態が不明としても、とにかく、ナミルリモンハナバチが生きていくには、宿主が繁栄してくれなければなりません。ところが、野生の蜂の個体数が世界的に年々減少しているそうなのです。日本でもミツバチの減少が深刻なレベルだと報道されています。個体数の減少にはいろいろ複合的な理由があるようですが、ナミルリモンハナバチにとって、宿主の減少は、自分たちの生存に直結します。

色鮮やかな花を次から次へ飛び回るナミルリモンハナバチの健気なさまは、自然環境が維持されているという証なのかもしれません。ナミルリモンハナバチはSNSなどで、希少種なので滅多に見ることができないと書かれていますが、そうでもないという方もいます。

皆さんも、散歩に出かけたときは、「ナミルリモンハナバチ」を探してみませんか。

もし、見つけることができたら、「幸せを呼ぶ青い蜂」は、貴方にどんな幸せを届けてくれるでしょうか。

注1;ネットでは、ナミルリモンハナバチという名前の他に、ルリモンハナバチという名前も見られます。これは、この蜂がルリモンハナバチ属、そしてその下の種に、ナミルリモンハナバチが分類されているからだと思います。

注2;日本のレッドデータブック検索システムhttp://jpnrdb.com/index.html

注3;北川村モネの庭マンモッタンで、検索してみてください。

注4;青い睡蓮の写真も、おまけに載せておきます。

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