スタッフブログ特別編(#1那賀川橋りょう(牟岐線)2/2)トラス橋って何?

2021年02月14日

スタッフブログ特別編:ブラリ橋(  #1那賀川橋りょう(牟岐線)2/2)

さて、今日は、前回に引き続き「那賀川橋りょう」に来ています。
この橋は、昭和11年に開通した牟岐線で一番長い鉄橋。

そう言えば、鉄橋も正式には鉄道橋が正しいのかな。
鉄橋だと鉄の橋。それじゃあ、コンクリート(PC)の橋は鉄橋じゃないのかな。
鉄道の橋だから鉄橋じゃないの。そんなことを会社で言っていたら、鉄の橋ではなく本当は鋼の橋が正解と教えてくれる人が・・・。

ここでひとつ疑問があります。

那賀川橋りょうは「橋りょう」と、何故ひらがなを使うのでしょう。国交省のHPは「橋梁」と書いてあるのに。疑問に思い調べてみると、「梁」が常用漢字じゃないから。国鉄時代から「橋りょう」と書いていたらしいのです。なんと律儀なのでしょう!

さて、那賀川橋りょうの形式は「10径間単純平行弦ワーレントラス橋」だそうですが、今日は、鉄橋は鋼の橋が正解と教えてくれた当社のMSさんと話をしていこうと思います♪

径間・単純・平行弦・ワーレントラス、この四つのワードの意味は、大体は分かりますよ (•̀ω•́ )

MSさん

「そうだろうね。今はネットという強い味方があるしね。ところで、ブラタモリじゃないけれど、ここで質問があります。長い橋を架けるときは、どんな橋の形式が使われるでしょう」

それは分かりますよ。吊橋ですね!

MSさん

「そうです。誰でも吊橋を思い浮かべると思うけれど、現在の橋梁技術では明石海峡大橋のような橋は吊橋以外の形式ではあり得ないよね。それじゃあ、ここからが本番です。橋の歴史を見ると、人類はこれまで、ある事のために長い橋を造らざるを得ない状況に直面します。そして、橋梁技術者がそれを見事に解決してきました。それは歴史的に3回起こったのですが、そのある事とは何でしょう」

今度は難しいですね…ヒントをお願いします

MSさん

「1回目は、およそ二千年前の事です」

あっ!分かりました。答えは水ですか。今もヨーロッパにたくさん遺跡として残っているし。イタリアに行ったとき見たことありますよ。ローマ帝国が造った水道橋ですね。石で造った巨大なアーチ橋

MSさん

「正解。水路を地形に合わせて上下させるわけにはいかないからね。ローマ帝国はそれを秀逸した測量技術や施工技術でクリアした」

MSさん

じゃあ、二回目は?」

これも難しいですね(><)もう一回ヒントを

MSさん

「ヒントは、目の前を見て」

・・・!鉄道ということですか、鉄道も急な坂を上がれないし

MSさん

「そう。まさに“那賀川橋りょう”に使われている“トラス構造の橋”が二回目の主役です。トラス橋がなかったら、鉄道の発展はなかったと言っても過言ではありません」

そう言われてみれば、徳島の長い鉄橋は、ほとんどが“トラス橋”ですね

MSさん

「ということで、今日はトラスの話をしましょう。『径間・単純・平行弦』については、言葉の意味は分かっているみたいなので、詳しい話は別の機会にしますか。この用語を一つづつ説明したいところなんだけど長くなるしね」

ところで、三回目というのは?

MSさん

「それは、今の道路を想像すれば分るでしょう」

あ、高速道路か(・o・)

鉄道の発展にトラス橋の存在が欠かせなかったなんて、想像もしたことがありませんでした。そこで、MSさんの講釈、いや説明を要約すると、こういうことらしいです。

日本の鉄道が「新橋―横浜間」に初めて開通したときからおよそ50年前、19世紀初頭のことです。イギリスで蒸気機関車による貨物鉄道の運行が始まります。その後、蒸気機関車の発達は飛躍的に進み、フランスやドイツ、さらにはアメリカなどにおいて、競うように鉄道網が整備されていきます。ところが、鉄道は道路のように大きな勾配が許されません。そこで渓谷を一跨ぎする長大橋が必須となります。今のような品質の高い鋼製品が手に入る時代ではない、それどころか、まだまだ木材も主要な橋の建設材料だった時代です。そこに打って付けの構造がトラス構造だったのです。

トラス構造とは何か。トラスは三角形が基本です。これは、ネットでも多くの方が説明しています。つまり、細長い材料を三角形に組めば安定した形状となるのです。下図のとおりですが、これは経験的にも理解できます。

トラス橋というのは、鋼材を三角形に組んだ構造というのがミソなんですね◎

MSさん

「まあ、そういうことなんだけど、トラス構造は二つの大前提がある。そのひとつが『三角形を構成する部材の接合点、これを格点と言い、ここは、ピン接合であること』どういうことかというと格点は自由に回転すること。つまり、曲げようとする力に対して抵抗しないということだね。それともうひとつ、各部材の途中に力が掛からないようにすること」

なるほど、二番目の部材の途中に力を掛けないということは、歩道の上から見ると分かりますね。確かに、線路の部分にかかる荷重は、横に通している桁で受けて、それはちゃんと格点に合体されていますね。だから、これは納得です。でも、一つ目の前提は、あうそうですかとは言えないですよ。見て下さい!なんかボルト(※実際はリベット)でガンガンに留めていますよ(・・;)あれがピン接合なんですか?とてもそうは見えないけど

MSさん

「いやあ、なかなか鋭い質問だね。ここへ来た甲斐があった。確かにピン接合にはなっていない。でも、これで大丈夫なんだ。気にしないで」

え、気になりますよ!早く教えて下さい

MSさん

「実は、トラス橋の建設が始まった19世紀には、本当にピン接合の橋を造っていたんだ。それが今でも日本に残っていて、岐阜県大垣市の揖斐川(いびがわ)に架かる旧揖斐川橋梁がそれ。鉄道は走ってないけど現役らしい。大垣市のHPを見れば詳しく紹介されているよ。しかし、今は見てのとおりガセットプレートというもので接合しているから、ピン接合ではなく、どちらかというと剛接合という接合になっている。今までの説明と違うと思うかもしれないけど、施工は剛接合、計算はピン接合で大丈夫ということなんだ」

(※旧揖斐川橋梁はGoogle Street Viewで見ると鮮明に分かります。また、近隣でと言えば、高知県にも、ピン接合の橋が残っています。吉野川に穴内川が合流する地点に吉野川橋がかかっていますが、そのすぐ上流に廃橋として存置されています。1911年(明治44年)に架設されたようで、左岸側が、下路平行弦プラットトラス橋、右岸側が下路ポニーボーストリングトラス橋となっています。)

MSさん

「トラスの橋は部材の長さが断面に比べて小さいので、曲げ剛性が小さく圧縮力や引張力が支配的なので、ピン接合として計算しても実用的には問題がないということなんだ」

う~ん、分かったような、分からないような…。いやあ、やっぱり、分からないような分からないような

MSさん

「そうだよね。それじゃ別の説明をします。トラス橋が壊れるところ見たことある?」

ないです(^^;)そんな人いるのかなぁ?

MSさん

「そりゃそうだよね。僕も見たことないけど、YouTubeでは見たことがある。それを見てもらうとイメージしやすいんだけど、とりあえず説明するね。トラス橋が壊れるときは、まずこの接合点(格点)から壊れるんだ。ここがグニャとなって、まるでピン接合のような状態になる。それから破壊する。ということは、初めからピン接合という前提で、構造的に安全なように設計しておけば、大丈夫ということになる。分かる?」

なるほど!さっきよりは理解できたように思います◎そういう考え方ができるのがトラス構造ということですね

MSさん

「そのとおり。今日は、もっとワーレントラスのことを話したかったけど、もうそろそろ帰る時間なので、続きは別の機会にしますか。ただね、ワーレントラスを理解するには三角関数が必要なんで、今度の機会までに勉強しておいてほしい。待てよ、三角関数くらい簡単か。まあ、それはいいとして、最後にこの橋(はし)を端(はし)から端(はし)まで見てみて。おやじギャグじゃないよ、何か気づかない?」

あ!北側の堤防に近い桁は、三角形が一つ足らないですね。気づかなかった

MSさん

「気づかないのが普通だと思うけどね。この橋は北側の桁で橋の長さを調整したということが分かるね。ということで今日は帰りましょうか」

そうしましょう
今日はいろいろと教えていただきありがとうございました(*^^*)

【那賀川橋りょう 諸元】

(坂本好著:「阿波の橋めぐり」から引用)
橋長 470.65m 1径間の支間 46.2m  トラス幅 5m  高さ 4m
直弦式ワーレントラス10連  軌道幅 1.06m

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